先日、当機構で検討を進めている里山を視察してきました。
現地は、一部にスギ林、その他は広葉樹林が広がるとても豊かな森です。
一見すると自然のまま残された森のように見えますが、案内いただいた方のお話では
「この森は人の暮らしと関わりながら形成されてきた二次林※です。だからこそ、放置すれば良いというものでもありません。」
生物多様性の保全、景観の維持、シカ被害への対応、防災、森林経営など
さまざまな観点から適切な手入れが必要であることをお聞きしました。
日本の里山の多くは、人の営みと自然の循環が長い年月をかけて織りなしてきた環境です。
薪を採り、落ち葉を堆肥として利用し、下草を刈り、水路を維持する。
そうした日々の暮らしの積み重ねが、結果として多様な生きものが暮らせる環境を支えてきました。
そのため、人との関わりが完全に途絶えることで、森が暗くなり、下層植生が失われ、生きものの多様性が低下する場合もあります。
「自然を守るためには、人の手が必要なこともある。」
そのことを改めて考えさせられました。
日本の里山文化には、自然を支配するのではなく、
自然の循環を損なわない範囲で関わり、その力を引き出していくという考え方があります。
森を管理するというよりも
「森が本来持つ再生力や回復力を発揮できるよう、人が少し手を貸す」
という感覚に近いのかもしれません。
近年、「ネイチャーポジティブ(自然再興)」という言葉が広がっていますが、その本質も単に自然を保護することではなく
人と自然の関係を見直し、自然が健全に循環できる状態を取り戻していくことにあるように思います。
私たちは現在、この里山を単なる森林としてではなく、
- 生物多様性の保全
- 環境教育・ESDの実践
- 関係人口、地域循環共生圏づくり
- 自然共生サイトとしての活用
といった視点から、その可能性を探っています。
森は木材を生み出す場所であるだけではありません。
人と自然のつながりを学び、地域の未来を考える場でもあります。
これからも地域の皆さんや専門家の方々と対話を重ねながら、この里山が持つ価値と可能性を探っていきたいと思います。
自然を守ることと、自然の力を引き出すこと。
その両方を大切にしながら、人と自然が共に豊かになる地域づくりのあり方を模索していきます。
※日本の身近な二次林「里山」
日本における代表的な二次林は、かつての農村部によく見られた「里山」です。
人々は長年、薪や木炭の材料としてクヌギやコナラなどを定期的に伐採し、落ち葉を農業用の堆肥として利用してきました。
このように、人間の手が適度に入ることで維持・管理されてきた森林も二次林に分類されます。